企業経営にとって、カスハラ対策にメリットはない?
企業経営にとって、積極的にカスハラ対策に投資する経済的合理性が見出せないというお話をよく聞きます。
しかし、現在の経営戦略に、学術的知見に基づくカスハラ対策を加えるだけで、企業ミッションと戦略を有機的に結びつけ、経済的利益につなげることができます。
カスタマージャーニーと顧客接点
人間は非常に複雑な存在です。もちろん、顧客も複雑な感情を持っています。
その感情は、単に商品・サービスが簡単・迅速に、あるいは素敵な体験や感動的な出会いによって、提供されることを望んでいるとは限りません。慢性的なストレスから理不尽に八つ当たりをすることもありますし、商品・サービスとは無関係な感情(人生や社会への不満等)をぶつけることを目的に他者と接点を持つこともあります。(※1)
この顧客との接点を求めて、業界を問わず経営戦略の中核にCX(カスタマーエクスペリエンス)向上を据えている企業は多くあります。自社商品・サービスのカスタマージャーニーを考えることは、顧客や顧客接点について深く分析することでもあります。そのプロセスは企業活動を行ううえで不可欠です。
しかし、ここには課題があります。
(※1)消費者の苦情内容・行動の急激な変化は、学術研究でも示されています。
<参考記事>
顧客の感情は市場原理だけでは測れない
カスタマージャーニーにおける顧客接点は、カスハラ発生のホットスポットであるという現実があります。定量的指標をいくら深く分析しても、「指標には現れてこないカスハラ」に悩まされる従業員の心理や行動を把握することはできません。
さらに、顧客接点をアナログからデジタル対応に置き換えたとしても、あなたの顧客が抱える事情はなくなることはありません。また別のスポットに場所を移し、トリガーを見つけます。
今こそ、カスハラ防止の法制化を見据え、マーケティング偏重になりがちな戦略に、カスハラ対策をプラスしてはいかがでしょうか。
顧客接点をホットスポット化させないために、カスハラトリガーそのものを潰すことを戦略に組み込みます。
→結果、CXが向上し、カスハラ対策による従業員のEX(従業員体験)も向上します。
組織がカスハラ対策を講じることによって、従業員にプラスの影響をもたらすことは最新の研究(※2)により明らかになっています。同様にワークエンゲイジメントが高い従業員が組織にもたらすポジティブな影響は言うまでもありません。
戦略を検討する際には、科学的エビデンスに基づいて効果が認められる「カスハラ対策」を選択しましょう。
環境そのものを変えていくことで、顧客には「エフォートレス」を提供し、企業風土に「サイコロジカル・セーフティ(心理的安全性)」を育みます。
<参考記事>
日本カスタマーハラスメント対応協会 第1回公開シンポジウム「ポジティブメンタルヘルスから考えるカスハラ対策」
[お知らせ]
より広い視野で「カスハラ対策」を考えてみませんか
ホットスポットにカメラを設置する、死角を減らすなど犯罪心理学の知見を活用して、地域防犯で成果をあげている企業や自治体があります。
あなたの組織の「カスハラ対策」にも学術的な視点を取り入れ、小さなオープンイノベーションを始めませんか。
当協会では賛助会員制度がございますので、小規模な講演・研修からスタートすることができます。
<参考記事>